【TeamAdp#1】理念のご紹介

こんにちは!コラムをご覧いただき、誠にありがとうございます。一般社団法人チームアダプテーション(以下、TeamAdp)共同代表の岩田美晴と申します。

簡単に私の自己紹介をいたしますと、1991年生まれの30歳、福岡県出身で、女性の既婚、子どもはいなくて、フットボールに親しみ、今は夫と埼玉県に住んでおります。重なるところがある方もない方も、どうぞよろしくお願いいたします^ ^

このTeamAdpは、(公財)埼玉県産業振興公社による「社会課題の解決につながる創業支援プログラム」の補助金交付対象として、2021年11月に設立しました。『障害のある人をはじめとするマイノリティ性を多くもつ人 ならびにその家族を排除しない インクルーシブな社会の創造に寄与する』ことを、団体の理念としています。(おっと、既に沢山の横文字が登場していますが、しばしお付き合いください…!)

というのも、上記にある アダプテーション/ マイノリティ/インクルージョンというワードは、この団体のキーであり、今回はここに説明を加えながら、TeamAdpの理念についても、掘り下げて共有していこうと思います。

【アダプテーション(Adaptation)】

「アダプテーション(Adaptation)」は、表現やスポーツの世界でそれぞれ使用される専門用語で、表現の世界では「脚色」、スポーツの世界では「適合」と訳されることが多いようです。それぞれ学術的な定義は異なりますが、どちらのアダプテーションも「ヒトや時代、社会に合わせて、原版をアレンジする」というニュアンスを含んでいます。

TeamAdpの主軸は文化・スポーツ活動です。TeamAdpではこれを、多様なヒトに合わせて、あるいは求められる時代や社会に応じて、アレンジできる人材(=アダプター)を増やしていきたいと考えています。伝承あそびを例に、アダプテーションを考えてみましょう。「だるまさんがころんだ」というあそびに、子どもと、大人と、高齢の人が参加するとします。

高齢の人は急に動きを止めることが難しいようです。そこで、鬼に掛け声のスピードを遅くすることを提案します。高齢の人にはマッチしましたが、子どもと大人にとってはあそびが少し退屈になりました。そこで、子どもには後ろ歩き、大人には手押し車で動くことを提案します。何度かみんなで楽しみましたが、何人かがあそびに飽きてきました。そこで、掛け声を「だるまさんがなわとび」や「だるまさんがドライブ」等に変更し、その通りに動いてもらうことを提案します。・・・

といった具合で、アダプテーションは、それぞれの身体能力や興味・関心等を踏まえて、活動の内容をアレンジするということであり、「多様性」や「変化」に耐えうる文化・スポーツ活動を創造するプロセスだといえます。TeamAdpでは、ともに活動するアダプターを増やしながら、誰であっても「わかる・できる・楽しい」を味わえる時間と空間を、広げていきたいと考えています。

【マイノリティ(Minority)

マイノリティというワードは聞いたことのある方が多いかもしれません。少数派という意味ですね。ヒトをある属性で区別するとき、権力をより多くもつ側は多数派、もたない側は少数派と考えます。私はたまたま、多数派である日本語話者で、異性愛者で、障害のない人なのですが、その「たまたま」のおかげで、そうでない人よりも優位な生活を送れています。例えば、私の夫は視覚に障害があり、車を運転することができません。一方で私は、車で買い物に行くことができ、買うべき商品もすぐに見つけ、セルフレジで次の人を待たせることもありません。「たまたま」ですが、夫と会うまではそれが「フツウ」だと信じてやまなかったのです。

もしも、自身のもつマイノリティ性を理由に、文化・スポーツ活動への利用や参加を躊躇している人がいるとすれば、それは由々しき事態です。そういう視点から、マイノリティ性をもつ人あるいはそのご家族が「参加してみよう」「やってみよう」と思える活動にアレンジをしたり、助言したりしていこうと考えています。先の「だるまさんがころんだ」に、マイノリティ性をもつ人が参加したら(あるいは参加できずにいたら)、どんなアダプテーションができるでしょう? 耳の聞こえない人だったら? 日本語学習者だったら? 一緒に考えてみましょう!

なお、創設期のTeamAdpの理念には「障害のある人をはじめとする」と記しました。私たちがとりわけ(現在の社会問題として)障害のある人をインクルージョンの対象としてフォーカスしているためです。ですが、本来はそこに閉じたものでなく、国籍や人種、学歴、貧困、ジェンダーといった側面でのマイノリティ性をもつ人が、よりよく過ごせているかという視点は忘れてはいけません。

【インクルージョン(Inclusion)

私がこのワードを知ったのは2010年、大学一年生(特別支援教育専攻)の頃です。その年、文科省には「特別支援教育の在り方に関する特別委員会」というものが設置され、そこで「インクルーシブ教育」という理念の方向性が示されたことを知りました。インクルーシブ/インクルージョンとは、「何らかの不合理な理由で地域社会から排除されていた人が、地域社会に包摂された状態」を指します。特別委員会では、障害者権利条約(※)を踏まえて、地域とは別の場(例えば特別支援学校)のカリキュラムで学ぶことの多かった「障害のある子どもたち」が、できるだけ地域で地域の子どもたちと「共に学ぶ状態」をつくっていくために、議論が重ねられていったのです。

『(障害があっても)誰もが地域での学びを求めていい』という教育の潮流を感じながら、私は特別支援学校の先生になりました。もとより、運動まひやてんかん、摂食機能の問題のあるお子さん、医療的ケアの必要なお子さんにとっての「わかる・できる・楽しい」を模索しつつ、この子たちが地域での学びを望んだら、施設を、設備を、課題を、教材を、風土を…、どのように変えていくべきだろう、どうしたらそこで楽しみ、成長し、活躍するだろうと、考えさせられました。

今、教育分野だけでなく、様々な分野で「インクルージョン」や「D&I」「DE&I」のワードが広まってきています。障害のある人だけでなく、様々な理由でそこから(あるいはそこにいながらも)押しのけられてきた「マイノリティ性のある人」が包摂される、インクルーシブな地域社会づくりが目指されてきています。TeamAdpにおいても、マイノリティ性のある人を、マジョリティ優位な地域社会の「場」に迎え入れるだけでなく、その人が、そこで楽しみ、成長し、活躍できるような文化・スポーツ活動の創造と実践を進めていきたいと考えています。

長くなりましたが、会員となられました皆様、是非私たちと一緒に「アダプテーション」の実践を積み重ね、「マイノリティ性のある人」が包摂される、「インクルーシブな社会」の創造に貢献していきましょう。

これからどうぞ(一社)チームアダプテーションをよろしくお願いいたします。

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